並木道は私を嘲笑う

仕事に行く途中に見つけた並木道に幼い頃の記憶が甦った。何処までも続く鬱蒼と生い茂る木々の間を。獣道のような細い砂利道を延々と歩いて行く幼い自分を。実際にはそれほどの距離があるわけでなかったと思うよ。それでも子供の足にとっては何処までも続く誰もいない道は、まるでこれから何処か遠くの知らない土地まで辿りつけそうで、心躍ったことを覚えている。今ではそんな場所を子供一人で歩かせていたらどんな事件にも発展しそうではあるのだが、そもそもがそんな獣道があるような鬱蒼とした森林の場所はなかなか見つからない。もっとも、今でも田舎では存在しないわけではないのだが、そういった場所に好んで入っていくような子供もいないだろう。勿論、そういった場所が好きな子供もいるだろうが。

 

何処までも歩いて行きたかった。あなたと。ずっと一緒にいたかった。君と。そう思う人達は全て私から離れていった。今は誰もいない。そんな並木道を一緒に歩いてくれる人は。私はそれほど罪深い人間なんだな。かつて傍にいた人々の断罪する声が聞こえるようだ。その声に心が血の涙を流している。それを止めることの出来ぬ自分の愚劣極まりなさに反吐が出るよ。