此処は天国か、それとも地獄か?


変わっていくことは悪い事では無い。確かにそうだな。私自身も変わっていったものだった。昔の私を知る者が居たとしたら、確実に「あなたは変わった」と言うだろう。今の私を知る者も、何時か私を「あなたは変わった」と言う事だろうしな。変わっていく事を責められる事も甘んじて受けよう。だが、変わるしかないから変わったわけだ。それを責められてもどうしようもない。二人の関係がどの様に変わったとしても、それでも私は私であり、君は君でもある。それだけが私にとっての事実。愛しても憎んでも。



夜の砂漠に誘われて天国とも地獄とも分からぬ場所へ辿り着く。君は美しい人々に囲まれて香しい汗を迸らせながら踊り続けている。人々は思い出の為や忘れる為に踊っているが、君は何の為に踊るのか?私は君の血で出来たワインが飲みたかった。だが、ワインは無いと言う。喉の渇きは我慢出来ないほどにも達し、何時の間にかいなくなってしまった君を探して彷徨う。まるで砂漠の砂を口に入れられたような渇きが急き立てるように。人々は囁く「楽しみなさい」と。「此処は楽しいことしかない場所」と。「あなたのアリバイを作りなさい」と。アリバイ?アリバイとは何だ?私にはそんなものは必要ない。君さえいれば。そして、やっと見つけたピンクのシャンペンは口に含むと砂の味がした。


We are all just prisoners here, of our own device


そうだな。私もまた囚われの身。運命に導かれて此処までやってきた。誰も殺せないし、出口を求めてどれ程歩き回ろうとも永遠に此処からは逃れる事は出来ない。


君という人に囚われた。それが私の運命。それだけで充分じゃないか。